伊藤潤二による新耳袋の漫画化「ミミの怪談」
「ミミの怪談」はホラー漫画家の伊藤潤二が「新耳袋」を自由にアレンジした漫画です。
「新耳袋」の不思議かつ不条理な怪談と伊藤潤二のアイデアと卓越した絵のうまさがマッチしています。
主人公は、怪奇現象はあると信じる女子大生のミミ。
このミミが新耳袋の体験者の代わりに様々な恐怖を体験します。
新耳袋ファンかつ伊藤潤二ファンなら手に入れたい1冊ですが、残念なことに今は絶版になっており、電子化もされていないので、2017年現在では中古本しか手に入りません。
興味のある方は、中古本屋をチェックしてみてください。
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怖いけれど、なぜかオモシロ 伊藤潤二漫画
伊藤潤二の漫画の特徴といえば、卓越したストーリーと高い画力。
ですが、彼の漫画はホラーなのになぜか笑えてしまうのです。
唐突に入るヘンな会話やシュールな大阪弁など、作者が狙っているわけじゃないのになぜか面白い。
「ミミの怪談」は、「新耳袋」に伊藤潤二のオモシロが加わって「怖い」だけではない、深みのある漫画になっています。
「ミミの怪談」各エピソード紹介
隣の女
原作:新耳袋 第一夜 【第四十八話 隣の女】
音が筒抜けの文化住宅で、爆音で音楽をかけても文句を言わない隣の女。
外出するときの服装は、まったく肌をみせない黒ずくめ姿。
あるきっかけで、体験者は女の手首が薄い金属板だということに気付いてしまう。
原作では、恐ろしくなった体験者が引っ越してしまい、女の正体は謎のままです。
漫画では、手だけでなく足も伸縮式の金属板になっています。
謎の女は自由自在に手足の長さを変えてミミに襲いかかります。
草音
原作:新耳袋 第五夜 【第三十五話 草音】
首吊り自殺した遺体の履いているパンプスがボタボタと何度も落ちるという不可解な話。
ホラー漫画家の伊藤潤二ならではの、リアルな首吊り死体描写が怖い。
冒頭のミミと直人の会話に注目!
「マイナスイオンが体にええで!!」からの唐突すぎる愛の告白(笑)!
残念ながら、2人はこのあと首吊り死体を発見してしまいます。
墓相
原作:新耳袋 第二夜 【第二十四話 訪問者】
墓地に入りこんで墓石を動かすのが趣味、という罰当たりな変人のもとに幽霊の訪問者が来たよ!という話。
漫画では、ミミの隣の部屋に住む変人のボディービルダーが墓石を動かす、という設定になっています。
ビキニパンツだけを身にまとった露出狂のムキムキマンが「ゴッゴゴッ」と墓石を動かす絵面はかなりシュール。
もし目撃してしまったら二重の意味で嫌な気分になれます。
海岸
新耳袋 第一夜 【第八十七話 サーファーの見たもの】
新耳袋 第二夜 【第十七話 助けるんや!】
新耳袋 第四夜 【第四十八話 スナップ写真】
の3話をうまくミックスした話。
伊藤潤二の話のまとめ方がうまく、海水浴もののホラー漫画として違和感なく読めます。
海水浴のはずなのにどんよりとした空の描写が伊藤潤二らしい。
作者の得意なグロい腐乱死体や、暗い目つきの美女の描写も冴え渡っています。
ふたりぼっち
原作:新耳袋 第二夜 【第四十七話 ふたりぼっち】
焼身自殺した母親が、真っ黒に炭化した身体になりながらも幼い娘にぴったりと寄り添うという、恐ろしくも悲しい話です。
漫画もほぼ原作に忠実になっていますが、なぜか私には笑えてしまうのです!
原因は、娘に取り憑いた母親を祓おうとする神主さんの大阪弁!
「できるだけやってみまひョ」
「苦しんでまんねん!!もがいてまんねん!!」
「怨霊退散!しとくんなはれ!!」
私はかなり長く大阪で生活していましたが、こんなコテコテの大阪弁を話す人は周りにはいませんでした。(いるところにはいるのかも…)
朱の円
原作:新耳袋 第一夜 【第六十九話 地下室】
取り壊した古い家の地下に封印された地下室があることが分かった。
封印された地下室には白い壁にひとつだけ朱色で直径40センチほどの日の丸のようなものが描かれていた。
この地下室と日の丸が何の役割を果たしているのか、まったく不明なまま再び埋められたという話。
伊藤潤二は、この日の丸が人間を消す、という恐ろしい設定を付け加えました。
ミミは友人に地下室につき落とされ、だんだんと大きくなる日の丸に襲われます。
表表紙と裏表紙にも短編漫画が
嬉しいことに、表表紙と裏表紙にも2,3ページの短編漫画が収録されています。
この短編漫画は原作に忠実で、まさに新耳袋らしいものになっています。
表表紙:新耳袋 第一夜 【第十三話 電柱の上にいるもの】
裏表紙:新耳袋 第一夜 【第七話 畑の看板】