「新耳袋 第八夜」日常の不思議・恐怖話が満載
「新耳袋 第八夜」は、第七夜に続いて、日常にひそむ不思議・不条理な現象を目撃してしまったごく普通の人たちの「不思議な話」が多く収録されています。
第六夜の「幽霊マンション」、第七夜の「ノブヒロさん」というようなインパクトのある怪談はありませんが、不思議な話と怖い話が絶妙に配置されていて、新耳袋らしい良さが出ている巻です。
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「新耳袋 第八夜」の感想
第七夜に続き、第八夜もかなり不思議な話が多いです。
第七夜と違い、第八夜は怖めの話も充実しているので、怖い話好きも満足できます。
また、特定の人が特定の場所で体験する話が少なめで、自分が同じ体験をしてしまうかもしれない、と思ってしまうような話が多いです。
怖い話も充実していて、新耳袋らしい良さが出ている巻でオススメです。
「新耳袋 第八夜」ハイライト
「第八夜」で面白かった話・ものすごく怖い話を紹介します。
面白い話
第五十八話 踊り子
Oさんが高校生の頃のこと。
夕方、居間でテレビを見ていたら、二階で何かが動き回る妙な音が聞こえてくる。家にはOさんひとりだけしかいない。
何だろ?と階段の手前まで行くとピタッと音が止まった。
何回か同じ体験をして、Oさんは気付いた。
奇妙な音は二階からではなく、響き具合から階段を登りきった踊り場からしている。
踊り場には本棚を置いてあるので、かなり狭い。
また、音はお母さんが買い物に出かけて、Oさんがひとりで留守番をしているときだけ聞こえる。
ある日の夕方、今日はひょっとしてあの音がするんじゃないかと思った。
階段の下へ行って上と見上げると、ゴンと音がして踊り場に両手を広げた白い女性が現れた。
ひどく小さな白人の女性が、バレエの衣装を着ている。
女性はそのままくるくると回り、奥の薄暗がりの中に消えた。
この日以後、二度と音がすることはなかった。
それから何年か経ち、荷物の整理で踊り場の本棚を動かすと、隠れていた壁に白いバレリーナの女性の絵があった。
銀行からもらったドガの『舞台の踊り子』のカレンダーだった。
新耳袋らしいわけの分からない話。
現れた踊り子もカレンダーサイズなのが興味深いです。
参考までに、ドガの『舞台の踊り子』の絵を載せておきます。
新耳袋 第八夜 最恐話ベスト3
第四十話 未放送
あるテレビ局のプロデューサーの家に遊びに行った人の話。
何か放送できなかった面白いビデオでもないですか?と興味本位で聞いたら、そのプロデューサーは1本のテープを持ち出してきた。
そのビデオの内容は、一家惨殺事件のあった廃屋に女性レポーターと男性霊能師が潜入してレポートをするという内容だった。
2人が廃屋の各部屋を回ると、突然血だらけの男女や子供達が映り込む。
彼らはいきなり現れたり消えたりする。しかも、暗闇のなかにぼおっと浮き上がるように映っている。
女性レポーターと男性霊能師をはじめ、現場の誰も彼らを気にする素振りを見せない。
各部屋を一回りして玄関に戻ったレポーターと霊能者。
レポーターに「今、幽霊はどこにいますか?」と聞かれ、霊能者は「あそこに幽霊がいる」と誰もいない空間を指差した。
その背後に親子4人がいきなり現れて、指差した先の方向をじっと見ている。
4人とも霊能者の指先から顔の方に視線を移して、表情が険しくなった。
「何してるんだ、こいつ」というような顔。そこでテープは終わっている。
見せられた人はどういう意図で撮影されたものか不思議がってると、プロデューサーが言った。
「撮ったまんまの素材テープ、未編集だっただろ?」
話も怖くて、ビデオテープも見てみたいのですが、個人的にこのインチキ霊能者が誰なのかがすごく気になります。
第六十六話 近づく
Mさんという女性の話。
ある夜、人の気配でふと目が覚めた。
真っ暗な部屋の隅に青い浴衣の女が立っている。
「だれ?」と声をかけたら目が覚めた。
夢か、と安心して部屋の隅を見ると、浴衣の女が立っている。
「だれ?」またそう言うと目が覚めた。
また夢?と部屋の隅を見ると、女がいる。見るたびにこちらに近づいてくる。
「これも夢よね?」そう声に出すと、また目が覚めた。
女の方をそっと見ると、もう部屋の真ん中に立っている。
「これも夢でしょ!」大声を出して目が覚めると、女の顔が目の前にあった。
真っ白い顔をした女の頬がMさんの頬に触れた。
「やめて!」と叫ぶと、女はぺろっとMさんの頬を舐めた。
ひゃっ、と起き上がると朝だった。しかし、頬はべっとり濡れていた。
どこまでか夢か現か分からないのも怖いし、見るたびに近づいてくる女も怖いです。
それだけでも十分嫌なのに、顔を舐められるなんて物理的にも気持ち悪いですね。
第六十九話 約束
予備校生だったHさんは、親戚のおじさんの高級マンションに1ヶ月留守番することになった。
海外出張で長期間留守にするので、その部屋を使ってくれないかという話だった。
マンションの鍵を受け取りに行ったとき、Hさんはおじさんからこう言われた。
「ひとつだけ約束がある。名前を呼ばれたら必ず返事をしてくれ」
海外出張に行く当日も、おじさんは空港から電話をかけてきて名前を呼ばれたら返事をするよう、さらに念押しした。
Hさんはこのときはじめて、この約束がちょっと気にかかった。
Hさんがおじさんのマンションで生活をはじめた日。
テレビを見ているとドアが開く音がして、背後から「カズノリさん」と声がした。
思わず「はい」と返事をして、ゾクッとした。
間違いなく女の声で、あわてて声の主を探したが誰もいない。
しかも、Hさんもおじさんも「カズノリ」という名前ではない。
その日から「カズノリさん」という声に返事をする生活が始まった。声がするのは一晩に一度だけ。
ある日、Hさんはべろんべろんに酔っ払って帰って、そのままベッドで眠り込んだ。
「カズノリさん、カズノリさん、カズノリさん」肩を激しく揺すられる。
あっ、返事!「はいっ」と飛び起きると酔いが吹き飛んだ。
部屋の隅に女が立っている。白いワンピース。痩せていて色白のすごい美人。
それがものすごく背が高くて、肩が天井について体が“くの字”に曲がっている。垂れた長い髪が床につきそうだった。
わっ!と驚いた瞬間、女が消え、気がついたら朝だった。
しばらくしておじさんが帰国した。Hさんは何も言わず鍵を返した。
おじさんはあの女の人に思いを寄せている、そんな気がした。
今でもおじさんはそのマンションに住んでいる。
中山市朗氏がこの怪談を語っている動画があったので紹介します。
怖いのか美人なのかハッキリしてほしい霊ですね。
すごくインパクトのある話なので、この話は「怪談新耳袋 劇場版」で映像化されています。
そしてこの女性が「怪談新耳袋 劇場版」のジャケットになっています。
原作の“美人”設定はどこかに行ってしまい、かなり怖いルックスです。
新耳袋のwikipediaによると、この等身大ポスターが劇場公開前にTBS本社のエレベーター前に掲示されましが、あまりの怖さとインパクトの強さに、エレベーター利用者からの苦情が殺到し、撤去されたそうです。
そりゃそうだ、こんなのがエレベーターから出ていきなり目に入ったらびっくりしますもん。
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