「新耳袋 第九夜」警備怪談が怖い!
「新耳袋 第九夜」では、警備怪談「I課長」に関する話が9話収録されています。
かなり面白い怪談で、「怪談新耳袋 劇場版」で映像化され、冒頭のエピソードになっています。
他にも面白い話、ほのぼのする話、妖怪話、もちろん怖い話などもバランスよく収録されていて全体的にクオリティの高い怪談が読めます。
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警備怪談「I課長」
警備会社に勤めていたI課長という男性が体験した怪談。
9話構成で、どの話もクオリティが高くて面白いです。
「警備怪談 I課長」あらすじ
I課長が勤めていた警備会社の事務所が、道玄坂のビルに引っ越した。
しかし、夜間の泊まりを担当する警備員は口を揃えて、夜おかしなことが起こると言う。
ある日、警備員が全員出払ってしまったので、I課長が泊まり番をすることになった。
そこで起きた信じられない恐怖体験とは―?
中山市朗氏がこの怪談を語る動画があったので紹介します。
警備怪談 I課長について
中山市朗氏のライブで知ったのですが、このI課長は怪談作家の西浦和也さんだそうです。(ちょっとうろ覚え。違っていたらごめんなさい)
あれだけすごい体験をしていたら、怪談作家になるのも納得できます。
冒頭で紹介した事務所の泊まり番以外にも、ゴルバチョフ書記長来日時の幽霊エピソードや阪神大震災で目撃された件(くだん)と思われるものの目撃例など、多彩で面白い体験をたくさんしています。
これを読まないのは本当にもったいない!怪談好きの方はぜひ本編を読んでみてください。
「新耳袋 第九夜」の感想
この巻は、不思議な話、怖い話、妖怪の話などがバランスよく収録されています。
新耳袋には、いつもちょっと笑えたりほのぼのする話も入っていたりするのですが、第九夜はそれが多めです。
また、「警備怪談 I課長」を始め、他の巻に比べるとクオリティの高い怪談が多く、初心者からマニアまでオススメできます。
「新耳袋 第九夜」ハイライト
「第九夜」で印象深かった話・ものすごく怖い話を紹介します。
面白かった話
第四十三話 走り回る犬
Dさんが寝ていると、部屋のカーペットの上を犬が走り回る音で目が覚めた。時計を見ると朝の5時。
「うるさい!」と怒鳴ってよく見ると、昔飼っていた犬に似ている。いや、間違いなく死んだうちの犬だ。
死んだはずの犬が、部屋の中をぐるぐると嬉しそうに走っている。
この日を境に、毎晩死んだ犬が現れては部屋を走り回った。
はじめのうちは驚いたが、ただ走り回るだけだし毎日続くと慣れてしまった。
ところがある夜、うるさくて目が覚めた。
よく聞くと足音が3匹分聞こえるような気がする。
起き上がってみると、あとの2匹はどう見ても神社の狛犬だった。
しばらくは驚きと不思議さで眺めていたが、3匹も走ればやはりうるさい。
「ええかげんにせえ!」と、つい狛犬を怒鳴りつけた。
瞬間、背筋がゾクッとした。たった今、誰かがすぐ後ろに立ったことがわかった。
2匹の狛犬は、自分の脇をぬけて背後の誰かになついている。
ゆっくりと振り返ると、狛犬を抱きかかえた白い着物姿の老人が立っている。
Dさんは、神様だと思った。
とすると、大変なことをした。神様のお使いの狛犬を怒鳴ってしまった。
とっさに「かわいい狛犬ですね」と口からお世辞が出た。
そのまま老人と狛犬は壁に消えていったが、去り際に老人はほんの少しだけこちらを見た。ものすごく嫌そうな顔をしていた。
その犬は今も時々走り回る。
新耳袋は怖い怪談で有名ですが、こんなユーモラスな話もあります。
神様(?)にお世辞を言ってすごく嫌な顔をされるのが笑えます。
新耳袋 第九夜 最恐話ベスト3
第二十七話 メロンソーダ
ずいぶんと田舎の出身だというSさんの話。
通学には1日に数本という無人駅の多いローカル線を利用する。
夜になると人家の灯りも街灯もない田んぼだけの暗闇が続く。
部活で遅くなったとき、いつも気になることがある。
ある踏切を通過するとき、カンカンカンと暗闇の中に赤い光が点滅するその下に、いつも緑色の何かが立っている。
それはぼうっと光っているために暗闇ではっきり見えた。
とはいっても、気がつくと通り過ぎていることも多かった。
ある日、何が立っているのかはっきり見てやろうと思ってドアの車窓にはりついた。
だんだんと踏切が近づいてくる。やはり立っていた。
サラリーマン風のスーツ姿。
その全身が、間違いなく緑色にぼうっと光っている。まるでメロンソーダのような色。
口をぽかんと開けている。目のところだけくぼんだように暗い緑色になっている。
その顔が車両を追って動いているのが分かった。
Sさんは帰りが遅くなるたび、暗闇の踏切にそれが立っているのを見たという。
真っ暗な踏切、点滅する赤い光、あんぐり口を開けたメロンソーダ色に光る人影。
リアルに情景が想像できてしまうインパクトの強い怪談。
電車の中からではなく、踏切で間近で見たらどうなってしまうのでしょうか?
第六十五話 続く
ある女性が子供のときの話。
引っ越しして1週間ほどした夜明け前のこと。
2階で寝ていたお父さんがダダダダダッとすごい音で階段をおりてきた。
「お前、霊能者って知ってるか?霊能者だ!」と母親に怒鳴った。
母親が訳をたずねると、お父さんはこんな話を始めた。
それは引っ越した最初の夜からはじまった。
目が覚めたら、階段の踊り場に立っている。なぜか、目の前に寝ている自分が見える。
これは夢か?と思っていると、玄関に髪の長い女が立っていることに気付いた。
それが真っ赤な何かを着ているのだけはわかる。その右手に包丁を持っている。
毎晩眠るたびに、その女が階段を上がって少しずつ自分に近づいてくる。
そして昨日、とうとうその女は階段を上がりきって、踊り場にいる自分の前を通り過ぎた。
寝ている自分の枕元に座り込んで、持っていた包丁を振り上げる。
あかん、殺される!その瞬間、振り下ろされた包丁がフッと消えた。
「わし、明日死ぬかもしれん。今日中に霊能者を探してくれ、たのむ」
母親はなんとか紹介を受けて、ひとりの霊能者に来てもらった。
「お宅には何の関係もないですが、深い恨みだけが流れ着いたようです。
だいぶ以前から関係のない人が何人も死んでいます。一歩遅かった死んでました」
すぐさまお祓いをしてもらい、その夜からは女は現れなくなった。
本編では、赤い女が近づいてくる様子がもっと詳細に描写されています。
でも、幽霊ってどうして一気に近づいて来ないんですかね?
焦らして楽しんでいるんでしょうか?
それとも少しずつしか近づけない理由でもあるんでしょうか?
第八十二~八十八話 舞ちゃんシリーズ
Fさん夫婦は、”舞”というひとり娘を9歳で亡くしている。
舞ちゃんが亡くなって初七日が過ぎたころに、舞ちゃんの声が聞こえるようになった。
それから舞ちゃんは、Fさん夫妻の回りで信じられないようなことを数多く起こした。
しかし、一周忌を迎えるころに舞ちゃんの声は聞こえなくなった。
後日談としてFさんが語るところによると、舞ちゃんは毎年、お盆になると帰ってきてFさん夫妻に話しかけてくれるのだという。
年を重ねるごとに舞ちゃんも成長しているようで、仕事や人生についてのアドバイスをしてくれることもある。
あの世のことも尋ねたことがあるそうだ。
「お花畑みたいなところもあるけど、真っ暗なところやで」と舞ちゃんは答えた。
舞ちゃんに関する詳しい怪談は本編で読んでみてください。
両親とその子供の話なので、どちらかと言うとほのぼのとした話です。
でも最後の舞ちゃんのあの世についてのコメントが、リアルでゾッとしました。
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